どうにも悔しくて、何か策はないかと考えた結果。


 俺ができたのは――。


「ひゃっ……」


 クッキーを口に運ばれるとき、すぐに手を取って、タイミングを見失なわないように。


 全てを口に入れて細い人差し指に舌を這わせる。


「い、一悟くん、おいしいの?」

「ん、おいしい……」

「そっかぁ」


 俺の中から糸を引いて離れていく。


 濡れてしまったそれを、羽入さんは自分の唇に当てた。


 ためらうことなく含まれ、俺達の唾液が混ざり合う。


「ほんとだ、おいし……」


 ……はぁ。


 やっぱり、完全敗北。


 どうしたって羽入さんには敵わなかった。


 俺を煽るの、うっま……。


「ね、いつお泊まりする? 今日? 明日?」

「へっ? そ、その、」

「ふ、ごめんね、それは冗談」


 羽入さんは俺の肩に体を預けて、


「でも、できるだけ早くしたいな……」


 ぎゅっと腕に抱きついてくる。


 俺の太鼓のように力強い心音は丸わかりだろう。


 たぶんその日が来てしまったら、俺はもう自分の欲望を抑えることはできない。


 羽入さんはいつでも俺を迎え入れてくれるつもりなのに、俺だけがウダウダしててもしょうがないよな。


 覚悟、決めないと。


 羽入さんのこと大事にしたいって、焦って傷付けたくないって思ってたけど。


 大事に、丁寧にすればいいだけだ。


「あの、絶対すぐだから、待ってて……ください」

「ふふ……ドキドキだね」


 ドキドキしすぎて、覚悟がしぼんじゃう前に。


 なんとしても、技術を身に付けるんだ……っ!