「ごめん。……わたし、用事があって……」

「用事?」


足を止めて振り返った綾人が、きょとんとした。


「わかった、行ってこいよ。待ってるから」

「あ、うーんと……結構、時間かかると思うから……」

「げ、マジで。なんの用事?」

「それは……その」


じっと見つめられ、言葉に詰まってしまう。

上手な言い訳を必死に探すけれど、ちっとも思いつかない。

焦りが、ますます頭を真っ白にしていって——。