俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

 外出先から、社のエントランスに戻って来た時のこと。エントランスに常駐する警備員が、後部座席のドアを外から開けて頭を下げて待っている。

 秘書の稗田駿(ひえだしゅん)も助手席から降りて、暁が降りるのを待っていた。

 暁が降りたのを見届けて、駿が暁の半歩前を歩く。前を歩くのは、暁に接触しようとする者を事前に阻止するため。秘書なのだが、SPと言った方がしっくりくる働きだ。両方の能力を兼ね備えていると言っても過言ではない。

 駿は、暁の父親の有能な秘書だった稗田の息子で、幼い頃から暁の秘書になるべく一緒に育てられる。更には、暁を守れるようにと柔道、剣道、空手を習い有段者なのだ。ちなみに、暁自身も自分の身を守れるようにと、一緒に通っていた。暁も有段者という最強のふたりで、敵に回したくない。

 駿は、がたいが良く少し(いか)ついイメージはあるが、暁とは違ったタイプのイケメンだ。そして、暁の素の姿を知る唯一の存在と言える。

 いつも冷静に対応する駿は、暁にとってなくてはならない存在なのだ。