「芹、うちに帰って来る気はないのか?」

「ここから通えなくはないけど……」

「けど?」

「通勤の時間がもったいない」

「そうか……。かと言ってストーカー被害に遭ったばかりの娘を、引っ越ししたからといって一人にするのは心配だ……。新城さんのところのセキュリティはしっかりしてそうだな」

「父さんまさか!?」

「ただ同棲をしたいと言うなら、もう少し付き合ってからでもいいんじゃないかと言うが、今回は芹の安全が最優先だ。新城さんの元なら安心なんじゃないか?」

「でも!」

「人は成長するものだ。以前の新城さんを知ってる剛の気持ちもわかるが、俺は今の新城さんが嘘を言っているようにはみえないが……」

「……」

 確かに剛の知っている暁とは雲泥の差で、芹を見る目が優しいことにも驚いている。

 だが、やはり可愛い妹のこととなると、不安なのだ。

「芹、何かあればうちに帰って来るんだぞ?」

「何かなんてありません。俺が全力で守るんで」

 自信満々の暁を前に、これ以上は反対できない剛だった。

 兄は渋々だったが、なんとか芹の実家で承諾をもらえた。