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「まどか先輩!」


制服から着替えてストップウォッチを片手にマネージャーへと化した私へ、直くんが笑顔で駆け寄ってくる。


結構離れたところから秒でこっちに着いたのに、全く息が切れていないのはさすがエースと言うべきか。


短距離選手でも体力をつけるのを怠らないその姿勢にストイックさを感じる。


距離感が近いところもお変わりないようで……じっと私の顔を覗き込む直くんに心臓がどきりと音を立てた。


「1週間ぶり!」

「そうだね。私がいなくて寂しかった?……なーんて」

「うん、めっちゃ寂しかった!!」


冗談めかして言ったつもりなのに、私の語尾は勢いのある直くんにかき消される。


てっきり、けろっとした顔でいつもみたいに頼もしく笑ってくれると思っていたんだ。


『大丈夫に決まってるじゃん~!』って。


だけど、声は大きくても眉尻は下がっている直くんの表情が、よりダイレクトに気持ちを表していて。


会えなかった時間を埋めるように、ただでさえ近い距離をなくしてくるから、


「そ、そう」


……どう返せばいいのかわからなくなる。