「怪談動画見て怖くて丸二日寝てないって?」「だって住職の怪談聞きたかったんだもん」「で、感想は?」「怖かった」「だろうな」「だからお願い」「泊まって行けって?」「お風呂も」「狭……」「布団も」「狭……」それでもきみは、頼みを聞いてくれるから。もう大丈夫。終日、きみがいるならば。



「昨日は朝から晩までオフィスに缶詰めでね、お昼を食べる時間もなかったの。ようやく帰路に着いたら、会社にスマホを忘れて。慌てて戻ったら終電に間に合わなくて。結局会社近くのネカフェで休んで、部屋に帰ったら昼までぐっすり。連絡できなくてごめんね、愛してるよ」終日、きみは嘘ばかり。



にかっという効果音がつきそうな笑顔。「好きだよ」って言ったあとの照れた表情。口を尖らせるから全く恐くない怒った顔。健やかすぎる寝顔や、デートのあとの寂しそうな顔も。いつだって思い出しているよ。終日、きみのことばかり。



社内でも往来でも、顔を合わせれば喧嘩して、揚げ足を取り合って。なのにこっちが困っていたら無条件で助けてくれたりする。そんなしっかり者だと思いきや、予想外の所でどじを踏んだりするから。いつの間にか目で追って、そのまま離せなくなる。終日、きみに奪われる。そうか、きっとこれが、……