虹の根っこには宝が埋まってるんだって、と言ってスコップを持ち、彼が姿を消してから、何年経っただろうか。私はただひたすら、彼の帰りを待つ。最近ではもう、彼は帰らないのではないかと思うようになった。宝なんて埋まっているわけがない。私は捨てられたのだ。宝なんてただの口実だ。



虹の根っこには宝が埋まってるんだって、と。無邪気な顔で彼女が言うから、僕は静かに頷き、頭の中で否定した。僕らの虹の下には宝はないよ。あの日僕らが埋めたのは宝でも思い出でもない。苦悩と絶望だ。だからきみはそのまま忘れていて。罪を背負うのは僕だけでいい。



虹の根っこには宝が埋まってるんだって、という話を信じていたのは私だけだった。どれだけ馬鹿にされても、私は信じ続けた。そんなある日、目の前に虹がかかったのだ。傷付けないよう慎重に根元を掘る。そして宝を見つけた。あまりの美しさに言葉を失いはらはらと涙をこぼす。もう言葉はいらないのだ。



虹の根っこには宝が埋まってるんだって。虹があんなにきらきら輝いているのは、そのせいかもね。だから僕らも埋めに行こうよ。そしてもっと虹を輝かせよう。そう考えたら、雨の日も少し楽しくなると思わない?だからそんなに詰まらなそうな顔をしないで。ほら、もうすぐ雨が上がるよ。



虹の根っこには宝が埋まってるんだって、と聞いたから。僕はその宝を手に入れるため飛び出した。絶対に宝を見つけてプロポーズするんだ。甲斐性無しで飽きっぽくて、苦労をかけてばかりの僕だから。これは、これだけはやり遂げるんだ。たとえ何年かかったとしても。きっと彼女は待っていてくれる。