両親が離婚した数年後、朝陽の存在を知った時、自分以外に父から愛情を注がれる対象がいることに胸をざわつかせたのが始まりだったと思う。

 初対面の時も、本当はただどんなやつなのか興味があっただけで、それ以降も仲よくするつもりはなかった。父と元愛人の子なんだからと、母と同じように憎い気持ちも当時は多少なりともあったから。

 しかし、朝陽はあの頃からとても明るく無邪気で、単純にいいやつだった。『かづ兄って呼んでもいい?』と言って、本当の兄貴のように慕ってくれた。

『これ、あげる。僕の宝物』と、俺の誕生日にくれたブリキのミニカーは今も大切にしまってある。

 優しくて周りに気を配れる朝陽を、俺はすぐに好きになった。だがそれと同時に、彼への羨望の気持ちと、自分に対する劣等感のようなものを抱き始めた。

 一応半分血の繋がった兄弟なのに、性格も人生もまったく違う。朝陽は皆に好かれ、家族とも幸せに暮らして自由に生きているのに、俺はまるで逆だからだ。

 母は俺をセーライの跡取りとして相応しい人間にしようと、前以上に厳しく教育するようになった。おそらく、父親がいなくても息子は立派な地位に立てるのだと、周りへの当てつけのような意味合いがあったのだろう。