貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 おとなしく従う以外に方法のないナディアは、一度だけ自身を疎むふたりを振り返る。

(本当に愚かね、私って)

 そこには邪魔者を追いやった喜びわかちあい、口づけを交わす恋人たちの姿があった。



「せめてもう少し食事に気を遣ってもらえるとありがたいのだけど」

 厩で過ごし始めて三日。ナディアは食事を運んできたメイドに向かって、泥のついたパンを示した。

 いったいどんな運び方をすればパンに泥をつけられるというのか。

「貢ぎ物にふさわしい待遇を、というのが殿下のご命令ですので」

「その貢ぎ物が予定日までに死んだらどうするの? 嫌がらせに夢中でそこまで考えつかないのかしら?」