貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 彼女はなにも知らない純真な少女を装っているだけで、なにもかも計算ずくで発言している。

 そうでなければそんな醜悪な笑みを浮かべられるはずがない。

「私を厩で生活させると言うのですか。本気で?」

「コリンヌの言葉ももっともだろう? それに、向こうでの生活に馴染まなければ蛮族の餌にされてしまうかもしれないぞ」

 ジャンが声をあげて笑うと、コリンヌも口もとを手で隠しながら控えめに笑った。

 ふたり分の雑音が鼓膜を掻き、ナディアをひどく不快な気持ちにさせる。

(これでもまだ、媚びなければならないの?)

 ジャンは控えていた騎士に命じてナディアを外へ連れ出した。