貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 ぜえぜえと荒く濁った息を吐き、ナディアは救いを求めて無意識に伸ばしていた手から力を抜いた。

(もし、もう一度やり直せるなら)

 不思議と風の鬱陶しさも全身の倦怠感も、頭や喉といった場所から感じる痛みも溶けてなくなっていく。

(次はもっとジャンに尽くそう。捨てられてしまわないように……)

 ふっとナディアの身体が冷たい石の床に沈む。

 子爵令嬢から王妃にまで上り詰めたナディア・ジエ・フアールはこうして三十一日目の朝を迎えることなく永遠の冬に旅立ったのだった。



***



 目を覚ましたナディアは自分の身体がひどく軽いことに気づいた。

(ここは……)