「まあ! なにがあったんです!? すぐに着替えたほうがよろしいわ」

「たしか替えのドレスを持っていた子がいたわね。すぐに借りましょう!」

「あの、私は大丈夫――」

「遠慮なさらないで。よかったらこのハンカチでお顔を拭ってください」

 令嬢たちが親切にするのは、ナディアが王子の婚約者だからである。

 それがわかっていたから、彼女は素直にうれしいと思えなかった。

(ゲルハルト様のほうがよほど優しかったわ)

 なにが起きたのか知りたがって落ち着きのない令嬢たちを横目に、ナディアは怒らせてしまったゲルハルトのことを考えていた。