人間という種族を嫌ってはいても、ナディアには他人の存在が必要だからという理由で。

(本当に最低だわ……)

 三度目の人生があるのなら、今の瞬間を正しくやり直したい。

 蛮族と呼ばれ、ナディア自身もそう思っていた獣人の男は意外なほど優しかった。

 それなのに手を貸してくれた礼も言えず、彼に向けるものではない怒りをぶつけてしまった。

(ちゃんと謝らなくちゃ)

 すぐに立ち上がろうとしたナディアだが、そこへ顔見知りの令嬢たちがやってくる。

 おそらくナディアとジャンの姿がないのを知り、下品な楽しみを満たしに来たのだろうが、そこにいるのは泥だらけになったナディアだけだ。