『ナディア、お前には失望したよ。側室を妬み陥れ、挙げ句には暗殺しようとする王妃などこの国には必要ない』

 知らないの、とナディアは高熱に浮かされながら叫んだ。だがその声はまともな音にならず、ガサガサと掠れただけ。

『ナディア様は私がジャンと結ばれるのがそれほどまでに気に食わなかったのですか? 私はあなたを姉と慕って仲良くしていきたいと思っておりましたのに……』

 ナディアが灰の塔へ投獄される日、コリンヌは彼女に向かって涙ながらに語った。声を震わせてはいても涙は流れていなかったし、笑いを堪えて唇を歪めていたようにも見えたがきっと見間違いだったのだろう。そう、ナディアは信じたかった。