彼が獣人だからという理由で無意識に侮っていた自身を悔いる。
「ナディア・ジエ・フア……リシャールと申します」
「フアリシャール?」
「いえ、リシャールです」
うっかり元王妃の癖で旧姓を名乗るところだった。
まだ婚約者の立場でフアールの姓を名乗ろうものなら、娘を王家に嫁がせたがってやきもきしていた数多の家門たちが一斉に騒ぎ立てることだろう。
(勝手に王族の姓を名乗ったなんて、それこそ重罪人だわ。結婚前に灰の塔行きなんてごめんよ)
これがフアール国の人間ならば危なかったが、幸い相手は人間社会に疎い獣人である。
「ナディア・ジエ・フア……リシャールと申します」
「フアリシャール?」
「いえ、リシャールです」
うっかり元王妃の癖で旧姓を名乗るところだった。
まだ婚約者の立場でフアールの姓を名乗ろうものなら、娘を王家に嫁がせたがってやきもきしていた数多の家門たちが一斉に騒ぎ立てることだろう。
(勝手に王族の姓を名乗ったなんて、それこそ重罪人だわ。結婚前に灰の塔行きなんてごめんよ)
これがフアール国の人間ならば危なかったが、幸い相手は人間社会に疎い獣人である。

