穏やかな言動をしていても、エセルの本質はゲルハルトと同じく肉食の獣である。

 獲物を狩るという行為に高揚し、声にかすかな熱がこもっていた。

「ナディア様があなた方を殺すよう願わなくてよかったですね」

 神経毒が体内を巡るのに合わせ、ジャンの身体がびくびくと不自然に痙攣する。

 目鼻や口から体液を垂れ流し、声を発することもかなわない。

 気絶したコリンヌにも同じように毒を与え、蛇の獣人たちは愚かなふたりの様子を観察する。

 三十日後、毒に侵され続けたふたりの正気を保障するつもりはなかった。