「エスタレイクの若き黒狼王、でいらっしゃいますか」
大陸にたったふたつしかない獣人たちの国。そのひとつである北のエスタレイクの王がゲルハルトという名の狼獣人だ。
改めてナディアは男を――ゲルハルトを観察した。
普段の彼女ならばそんな不躾な態度は控えただろうが、どうしてもそうせずにはいられなかったのだ。
(ゲルハルト・ヴァン・レーヴィヒ。……蛮族の中でも最も残虐な人間嫌いの王)
緊張のためかナディアの鼓動が速度を増していく。
「大変失礼いたしました。それであれば私の名から名乗るべきでしたね」
目下の者から名乗るのは貴族社会の礼儀だ。
大陸にたったふたつしかない獣人たちの国。そのひとつである北のエスタレイクの王がゲルハルトという名の狼獣人だ。
改めてナディアは男を――ゲルハルトを観察した。
普段の彼女ならばそんな不躾な態度は控えただろうが、どうしてもそうせずにはいられなかったのだ。
(ゲルハルト・ヴァン・レーヴィヒ。……蛮族の中でも最も残虐な人間嫌いの王)
緊張のためかナディアの鼓動が速度を増していく。
「大変失礼いたしました。それであれば私の名から名乗るべきでしたね」
目下の者から名乗るのは貴族社会の礼儀だ。

