貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 こんな暗闇でもはっきりと青く見えるのは、彼自身の瞳が輝いているからだろうか。距離が近いから、などという現実的な考え方は押しのけておく。

 ナディアは男から目を離せなかった。

 この獣人は瞳だけでなく、顔も息を呑むほど美しい。

 漆黒の髪はやや長く、前髪の端がまぶたにかかっている。頭上にはやはり狼の耳があった。

 輪郭は鋭く、唇が横に引き結ばれているせいで不機嫌そうに見える。

 切れ長の瞳と合わさって冷たい印象を与えるが、敵意は感じられない。

「ご、ごめんなさい」

 見とれている場合ではないと思い直し、ナディアは慌てて男の肩を押しのけようとした。