貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 自身を見つめる眼差しには不安と緊張が見え隠れしているが、人間にありがちな蔑む色はない。

 ふとゲルハルトの口もとに微笑が浮かぶ。

 人間嫌いは変わらないはずなのに、ナディアと似た匂いがするせいか目の前の男に好意的な感情を持つ自分に気づいた。

「正式な発表は夜にするつもりだが、私はあなたの娘をつがいにしたい。本人からの許可は既にもらっている」

 つがいという言葉に子爵が反応する。その言葉はあまり人間の間で使われない。

 しかし妻にしたいのだという意味は理解した。

「娘が自分の意思で受けたのなら、私のほうからは『おめでとう』と言う以外にありません」