貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

「焦らすわね。それまで私の相手をしてくれるならいいわよ」

「望むところだ」

 寄り添ったふたりが鼻先をくっつけてから口づけを交わす。

 それを邪魔する無粋な者はエスタレイクにいなかった。



 フアールで行われたパーティーからひと月と少し経った。

 ジャンによって集められた貴族たちは、不安と好奇心を抱きながら船に乗ってエスタレイクへと向かう。

 その中にはナディアの両親の姿もあった。

 ナディアのほうで手紙を送っていたのもあるが、ジャンも彼らを誘っていたからだ。

 思惑の裏には『両親の前でナディアを貶める』という狙いがあった。