貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

「そんなになでていたか?」

「……噛みつくほうが多いかもね」

 狼の獣人がそういうものなのか、ゲルハルトがそうなのかナディアは知らない。

 ただ、彼は愛情表現としてよく甘噛みし、ついでとばかりにすぐ舐める。

「狼の姿ならまだわかるんだけど」

「そのうちな」

 獣人たちは主に人の姿で生活するが、獣の姿にもなれる。

 そのほうが気楽だそうだが、ゲルハルトは人のままでいることを好んだ。

 狼の姿しかとれなかった頃に両親を失ったという嫌な記憶と結びついているのが大きい。

「それよりもまず先に見せるものがある」

「なに?」

「楽しみにしておいてくれ。もうすぐだから」