ひどく黴臭く、埃と砂にまみれている。それでも構わないと思えるほど、彼女は水分に飢えていた。

(どうしてこんな終わりを迎えなければならないの?)

 幾度となく繰り返した疑問は声にならず、彼女の心の奥底に落ち込んでいく。

(ジャン。コリンヌ。私があなたたちになにをしたというの……)

 夫でありこの国の王でもあるジャン・ベケット・フアール。

 そして彼が正妻の王妃よりも寵愛した側室、コリンヌ・デジレ・シャピュイ。フアール国の王族にのみ許されるはずの氷にも似た青――レスティライトカラーの使用を認められた唯一の女性である。