貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 ナディアにとって自身を侮られるよりも、それが一番つらかった。



 行きは遡った川を下り、ナディアは十日ほどで故郷の土を踏んだ。

 半月かけて獣人のもとへ追いやられるのだと暗い気持ちで過ごした行きに比べ、フアールへの道のりは存外平和だった。

 祖国でなにが起きるかを考えるともやもやする思いはあった。しかしナディアの世話のためについてきた五人のメイドたちが常に明るく振る舞ったおかげで、必要以上に気落ちせず辿り着く。

 一応賓客として招かれたナディアとゲルハルトは、数か月振りにフアールの城を訪れた。

 通常、遠方から来る客のために部屋をしつらえているものである。