(前世でも今世でも彼女は私を嘲っていた。わざわざ厩まで来て馬鹿にするぐらい)

 ぐるる、という唸り声に顔を上げると、ゲルハルトが眉間に皺を寄せている。

「どう理由をつけて断ろうと、それを盾に無駄な争いを起こしかねない。人間はそういう種族だ」

「……そうね。私をエスタレイクに送る時も、断られたらそれを理由に戦争しようとしていたわ」

「無用に民を傷つけるわけにはいかない。俺の身ひとつで収まるのなら甘んじて受け入れよう」

「私も行くわよ。関係者なんだから」

 屈辱的だとわかっていてもゲルハルトは国のために自分を犠牲にする。