エスタレイクでの日々があまりにも楽しく幸せなせいで、すっかり頭から抜け落ちていた。

 ナディアを前世で辱め、不名誉な死へと追いやった人間はまだ健在である。

 祖国でジャンとコリンヌがどのような生活を送っているか、ナディアは知らない。

 だが、書状にはジャンの名が記されている。

 わざわざナディアについて触れることに、いい意味があるとはとても思えなかった。

「たとえば──言葉が悪くなるのはごめんなさいね。『あれが蛮族の貢ぎ物になった女だ』とかそういう嫌がらせを公の場でやりたいのかもしれないと思って」