ホールの端へと移動したナディアとゲルハルトのもとに、苦虫を噛み潰したような顔のエセルが近づく。

「なにかあったのか?」

「ええ、大変残念ながら」

 不穏さを匂わせたエセルは、つい先ほど外で使者から受け取った書状をゲルハルトに手渡した。

 文面に目を通したゲルハルトがすっと目を細める。

「ナディアをフアールに呼び戻すだと?」

 ナディアが息を呑んで自身の口もとを手で覆う。

 楽しかった時間が崩れ去るような衝撃に、声を出すこともかなわなかった。