貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 それは当人たちが知らないところで〝春〟の予感に燃えていたからだが、ナディアからすればまだ気持ちが追いついていない。

(キスはした、けど)

 着色された蜜ろうを塗られた唇にそっと触れる。

 艶やかな唇には昨夜の熱がまだ残っていた。

(あれはそういう意味でいいのかしら……?)

 ゲルハルトはナディアに好きだと告げなかった。キスをして、特別だと言っただけだ。

 それが果たして人間の自分が思う認識と合っているのかどうか、ナディアには自信がない。

 獣人に未知の親愛表現があってもおかしくはなかった

 だからナディアは素直に自分の気持ちを表に出していいのかわからないでいる。