貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます！～二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?～

「もう。だからってこんなところで……」

　目線の高さをゆうに越える生垣の向こうから、どうにも甘ったるい声がする。

　知った人間のものではないが、つまりこの庭園はそういう目的としても使われているのだとわかる。

　だから生垣は視界よりも高く、庭園自体が複雑に入り組んでいるのだろう。

　そういった楽しみが一部の貴族の間にあると知っていても、ナディアからすると夫や妻のいる身でなにをしているのだという気持ちが強い。

（これで何組目よ！）

　苛立ちを隠しつつナディアは声のそばを離れる。