貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 唇の端を甘噛みし、舌を滑らせる。

 驚いたせいで引っ込んだ涙の跡も口づけで丁寧に拭い、目尻に残っていたしずくも舐め取った。

「ときどき、どうしようもなくこうしたくなる。人間なんて消えてしまえばいいと思っているのに、おまえだけはずっとそばで笑っていてほしい」

 はくはくとナディアが口を開け閉めしていると、ゲルハルトはナディアの鼻先に自分の鼻を優しく押しつけた。

「特別なんだ」

 固まったままのナディアの視界の隅で、ゲルハルトが尾を振っていた。

 大抵の場合、ゆらりとゆっくり揺れているだけのそれが今は興奮を示すように激しく動いている。

「私にとっても……あなたは特別だと思う、わ」