しばらくナディアはきらびやかな広いホールを品よく歩き回っていたが、やがて室内にはいないようだと判断し、庭園へと足を踏み出した。
夜露に濡れた薔薇の香りがしっとりと漂う庭園は、今日夜会が行われている侯爵家が有するにふさわしい贅沢な空間だった。
季節を表す四つの区画が、薔薇の生垣によってわけられている。どこもきれいに整備されており、人の手が加わっていない場所はひとつとしてない。
(騒がしくなくていいわ。ほっとする)
かしましい女性の声も、好奇に満ちた眼差しもここにはなかった。
とはいえ、あまり聞きたくもない声は耳に入ってくる。
「さっき僕を見つめていただろう?」
夜露に濡れた薔薇の香りがしっとりと漂う庭園は、今日夜会が行われている侯爵家が有するにふさわしい贅沢な空間だった。
季節を表す四つの区画が、薔薇の生垣によってわけられている。どこもきれいに整備されており、人の手が加わっていない場所はひとつとしてない。
(騒がしくなくていいわ。ほっとする)
かしましい女性の声も、好奇に満ちた眼差しもここにはなかった。
とはいえ、あまり聞きたくもない声は耳に入ってくる。
「さっき僕を見つめていただろう?」

