ナディアは一度目の人生で、その恐ろしさを完全に理解できていなかったからあんな終わりを迎えてしまった。

「ごめんなさい。詳しくお話したいのだけど、殿下と約束をしているの」

 話を聞きだそうとする令嬢たちをやんわり牽制し、縫うように人々の間を抜けていく。

(以前もジャンは途中で姿を消したわ)

 その時、ナディアは彼が待てと言ったからおとなしく言う通りにした。

 今回、同じ選択をしなかったのはこれが二度目の人生だからだ。

(どこでなにがどう変わるかわからないもの。とりあえず行動してみないと)