貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます！～二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?～

　もとより不必要にナディアを拒み、傷つけたわけではなかったが、明らかにまとう空気がやわらかくなったのだ。

　体調が回復してすぐにメイドの仕事を行おうとした彼女を気遣い、荷物を代わりに運んだり、掃除をさせずに茶を飲ませて休ませたり、まるで子供の面倒を見ているようだとナディアは指摘した。

「そんなに優しくしてくれなくても、もう倒れないわよ？」

「別にそういう意図があってやっているわけじゃない。──おい、それを食べ終えるまでおとなしくしていろと言ったはずだ」

　なぜメイドとして働きに来たのに、アウグストお手製の甘い果物のパイでもてなされているのかさっぱりわからない。