貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 獣人たちが落ち着いた頃になって顔を見せたエセルは、ゲルハルトが様子を見に来た話を聞いて喜んでいた。

「エスタレイクに春が来そうですね」

 具体的になにがあったかは伏せたが、エセルはふたりの間に漂うなんらかの空気を敏感に感じ取った。

 蛇の獣人は寒さで身動きが取れなくなるため、暖かい春を特別視している。

 それをナディアに教えたのは、誰もいない夜になるとふらりと現れるゲルハルトだ。

「おまえが目覚めて喜んでいるんだ。あいつは慶事をなんでも春と呼ぶからな」

 ナディアが目覚めて以来、ゲルハルトは目に見えて態度が変わった。