次の瞬間、ナディアはゲルハルトの腕の中にいた。

「もしおまえが死にかけた時は、俺が助けてやる」

 それを聞いたナディアが小さく息を呑む。

 エスタレイクへ来たばかりの頃にした話をゲルハルトが覚えていた事実に泣きたくなった。

『もし私が死にそうになったら、助けに来て』

 あの時は『わかった』と無理に言わせた形だったが、今回は違う。

「ありがとう」

 顔を上げられなくなり、ナディアはゲルハルトの胸に顔を押しつけて礼を言う。

 その声は震えていたが、ゲルハルトはそれ以上なにも言わずナディアを抱き締め続けた。