貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 かつて夫だったジャンにも感じなかった疼きを隠し、努めて冷静に対応する。

「……ありがとう。とても暖かいわ」

「またおまえのための衣服を手配させておこう。これからもっと寒さが厳しくなる」

 ナディアの肌に風が触れないよう、ゲルハルトは風上に立った。

 ちょうど月を背にした姿は息を呑むほど幻想的で、ナディアはゲルハルトから目を逸らせなくなる。

「あなたってきれいなのね」

「なんだ、急に」

 カラスの羽を濡らしたような黒い髪の上で、彼女の声を聞こうと狼の耳が揺れる。

 それを見た瞬間、ナディアの中に未知の思いが芽生えた。

(触ってみたい。もっとこの人に近づきたい)