貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 赤褐色に近い茶の毛並みを持つ父と、月を隠した雲に似た灰色の毛並みの母から生まれたゲルハルトは、両親に似ず一片の陰りもない漆黒の色を持って生まれてきた。

 そんな黒狼に襲われた密猟者たちは泣いて逃げまどい、幾人かは抵抗を試みたがうまくいくはずがない。

 ゲルハルトは知らなかったのだ。自身の爪や牙がたやすく他者の身体を引き裂けることを。

 それを楽しいと感じた自身に気づいた時、ゲルハルトは血だまりの中で人の姿を覚えたのだ。

 弱者を蹂躙するのは獣ではなく、人の行いだと学んだために。

 ナディアがすうと小さく寝息を立てる。

 ゲルハルトはそんな彼女を見つめ、溜息を吐いた。