貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

「結局、母も殺され俺は外へ引きずり出された。男の手に噛みついた時に斬られた傷がこれだ」

「あなたは逃げられたのね」

 ひとりだけでも生き延びられたならよかったとは言えない。

 それは惨状に巻き込まれなかった第三者にしか吐けない残酷な言葉だ。

「……その人間たちはしかるべき罰を受けたのよね?」

 そうであってほしいと願いながらナディアが尋ねると、ゲルハルトはうっすらと微笑した。

 背筋が凍るほど美しく、寂しい笑みだった。

「匂いは覚えていたからな」

 ゲルハルトの答えはそれだけで、だからどうなったという部分ははっきりしない。