貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 ナディアはゲルハルトが過去形で話していることに気づき、彼の気持ちを思ってそっと自分の胸を押さえた。

 淡々と話していたゲルハルトは窓のほうへ目を向け、一瞬だけ唇を噛む。

「人間の密猟者がエスタレイクに踏み込んでいるなんて、それまで誰も知らなかったんだ」

「……あなたたちは狼の姿をしていたのよね」

「ああ」

「じゃあ……」

 ナディアはその先を言えなかった。

 国王夫妻は人間の手によって殺され、ゲルハルトは深い傷を負った。

 その事実がなにを示しているか理解しても、口にするにはあまりにも悲しすぎたからだ。