貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~


 しかし武骨な手は彼女の頬に触れなかった。

 あと少しの距離で重なった距離を、ナディアはなぜか残念に感じてしまう。

「ちょっと寝不足なだけ。やっぱりあなたたちの病は人間の私にかからないみたい」

「……ならばいいが」

「あ、でもエセルたちも元気よ。ふわふわした耳と尻尾の人がかかるようね」

 ナディアの目がゲルハルトの頭上に移る。

 いつかは触れてみたいと思っているやわらかな黒い狼の耳。

 音のするほうを向く耳は、今はナディアに集中していた。

「同じ獣人でもそんなふうに違うのね。ひとくくりに考えるのは間違いだったんだって思うわ」

「おまえはよく喋るな」