貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 まだ起きていない出来事を、まるで見たもののように思い出せる。

 ナディアは目の前の賑やかな様子を夢の中でも見た。

(ねえ、どうして夢と同じことが起きているの?)

 屋敷のあちこちから『そっちだ!』『うわっ、引っかかれた!』という声が聞こえる。

「まったく、どこから入り込んだものか……。お嬢様、もし心当たりがありましたらお教えくださいね。窓はきちんと閉めておいたはずなんですが」

「……厨房にある食器棚の裏に穴ができているのよ。その隙間から入ってきたんだわ」

 それを聞いたのは夢の中での話だ。

 だから現実でも同じはずはないと思いながらも、ナディアは動揺を隠しながら告げる。