貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 リシャール子爵夫妻は不安そうにしながら泣きじゃくる娘を見守っていた。



 ナディアが本格的におかしいと思ったのは、それから数日が経過してからだった。

(これ、知ってるわ)

 妙に騒がしい廊下に出ると、使用人たちが屋敷に入り込んだ猫を追いかけ回している。どこかから潜り込んだようだと申し訳なさげに説明するメイドの言葉はほとんど耳に入らない。

 なかなか猫が捕まらず、一日中大騒ぎだった屋敷。

 元気いっぱいの猫を見て『いっそ我が家で飼う?』と話す両親。

 それに対し、使用人たちは『こんないたずらっ子を屋敷に置いたら大変なことになります!』と猛反対したのだ。