なぜかナディアの顔がますます赤くなる。

「あなたのほうがもっとわからないわ」

 そう言い返して、再び部屋の清掃を始める。

「……でも、ありがとう」

 自身を殺した男に嫌われまいと尽くすより、自分の力で生きていくほうがずっといい。

 新しい場所で、新しい人々と、かつては手に入れられなかった未来を掴み取るのだ。

 もうナディアは、流されて他人に人生を奪われるような人間にはならない。