貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

 新鮮な野菜もフォークで刺すとしゃきりと気持ちのいい音がし、瑞々しい味わいに飲み物がなくとも喉が潤う。

 スープだってナディアの心を弾ませた。じっくりと野菜を煮込んで作られたそれには、塩漬けの豚肉を薄く切ったものが贅沢に入っている。舌先でとろけるほどやわらかくなった根菜もたっぷりと入っており、スープの汁気だけではなく具も楽しめるように工夫されていた。

(なんて、おいしいの)

 昨日までと変わらない朝食だというのに、ナディアは初めて食べたもののように感動していた。

「ナディア? どうしたの?」

「え?」

 母に問われ顔を上げてからようやく、彼女は自分の頬を流れる涙に気づいた。