貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~

(夢から覚めてよかった。灰の塔に閉じ込められて死ぬなんて最悪だもの)

 ナディアは自分の席につくと、給仕された料理を見て胸を詰まらせた。

 陽の光をぎゅっと凝縮したようなふかふかのオムレツは、ナイフで割るととろりと黄身がこぼれ出る。行儀が悪いとわかっていても、ナディアはこのとろけた卵にパンをつけて食べるのが大好きだった。

 焼きたての白いパンは表面はさっくりと軽く、中はもっちりと詰まっている。王都でも有名な店から買いつけたバターをひと欠片落とせば、じんわりと染み込んで甘さと快い塩辛さの調和を生んだ。