次第に冷えていく風を感じながら、ナディアは遠ざかっていく家族に思いを馳せて少しだけ泣いた。

 船の者たちはジャンに言い含められているのか、必要がある時以外はナディアに話しかけなかった。

 それでも蛮族の貢ぎ物となる彼女になにも思わないわけではないらしく、覚悟していたほどひどい待遇ではない。

 おかげでナディアは強要された厩での生活よりは、まともな時間を過ごすことができた。

 やがて船がみエスタレイクのと、フアールで用意した衣服では寒さに耐えられなくなり、ナディアや船員たちは厚手の服を身にまとうようになった。

 エスタレイクの領土に入ると、より寒さが厳しくなる。