最後まで両親と顔を合わせてもらえないまま、ナディアは馬車で国土の端にあるロセール川に向かい、待っていた船にのせられた。

 ロセール川はキルシュフェラー山脈の頂から流れる川で、幅が広いために対岸へは船を使う必要がある。

 金銭をあまり用意できない者は小さな舟で渡るしかないが、ナディアに用意されたものはかなり大きい立派な船だった。

 初めての乗船経験は不安に満ちていたナディアの心をわずかに弾ませた。

 エスタレイクはフアールよりもずっと北にあり、馬車で向かうよりもロセール川を北上して向かったほうが早い。

 それでも王都までおよそ半月は必要だというからその距離には驚くばかりだ。