「ご機嫌な馬の嘶きのような声だ」
いつも言う、ガード下のような声じゃないんだ。
「いつものガード下よりも派手だった」
心を読んで、冷静な評価はいらないって。
「ここは、どんなに大きな声を上げても、隣近所に迷惑にはならないから、思いきり声を上げてもいい」
大きな声を出してもいいんだ、そっか、それはよかった。
って、そうじゃない。
せい坊っちゃまって、どういうことなの?
「こちらは、庭師の竹さん。俺が生まれる遥か昔から、住み込みで精魂込めて庭の手入れをしてくれている」
竹さんが慌てたように頭に巻いていた手拭いを取り、お互いに初めての挨拶を交わす。
歳は六十代かな。浅黒く日焼けした精悍な顔つきで、職人さんだから寡黙で純朴そうな雰囲気。
「せい坊っちゃま、ごゆっくりご観賞なさってください」
「ありがとう」
道具箱を持った竹さんの姿を見送ったあとは、聞きたいことが山ほどあるから、卯波先生に視線を移した。
懐かしいなあ、淡々としたクールな表情も変わらない。
って、懐かしがっている場合じゃない。
「さあ、どこから突撃質問をするんだ?」
「ここは庭園じゃない、それは理解しました。せい坊ちゃまって、どういうことですか?」
卯波先生の捲り上げてある袖を引っ張り、答えをせがむ。
「ここは俺の実家だ、もう罪人呼ばわりするな」
信じられない。実家って、せい坊ちゃまって。
いったい私は、どこへ来ちゃったの?
院長から資産家とは聞いていたけれど、まさかここまでとは思わなかった。
あまりの衝撃に驚くことさえ忘れて、花々が色を競う辺りを見渡す。
「ぽかんとして面食らったのか?」
「この光景、信じられないですよ」
あまりに現実離れだから、にやにやしちゃって頭をゆっくりと横に振った、冗談みたい。
ここが、人の住んでいるところだなんて、誰が思う?
誰だって、不法侵入の住居侵入罪って思うよね。
って、あっ!
「さっき心配だって、しょんぼり頭がうなだれてたのは演技ですね」
「からかってみたくなった、花散策に来たことに間違いはない。さ、行こう」
いつもの温かな大きな手が、私の手を握り飄々と歩き出す。
からかっておきながら、何事もなかったような態度なんだから。
卯波先生は、自分のペースにもっていくのが上手だから、手を握られただけで私は卯波先生の思うがまま。
「狐につままれたような顔だ」
「ふつう、そうなりますでしょ。どうなってるのか、頭の中が混乱してますよ」
あとで、ゆっくりと説明してくれるって。
なにがなんだか状況が把握できないよ。
いつも言う、ガード下のような声じゃないんだ。
「いつものガード下よりも派手だった」
心を読んで、冷静な評価はいらないって。
「ここは、どんなに大きな声を上げても、隣近所に迷惑にはならないから、思いきり声を上げてもいい」
大きな声を出してもいいんだ、そっか、それはよかった。
って、そうじゃない。
せい坊っちゃまって、どういうことなの?
「こちらは、庭師の竹さん。俺が生まれる遥か昔から、住み込みで精魂込めて庭の手入れをしてくれている」
竹さんが慌てたように頭に巻いていた手拭いを取り、お互いに初めての挨拶を交わす。
歳は六十代かな。浅黒く日焼けした精悍な顔つきで、職人さんだから寡黙で純朴そうな雰囲気。
「せい坊っちゃま、ごゆっくりご観賞なさってください」
「ありがとう」
道具箱を持った竹さんの姿を見送ったあとは、聞きたいことが山ほどあるから、卯波先生に視線を移した。
懐かしいなあ、淡々としたクールな表情も変わらない。
って、懐かしがっている場合じゃない。
「さあ、どこから突撃質問をするんだ?」
「ここは庭園じゃない、それは理解しました。せい坊ちゃまって、どういうことですか?」
卯波先生の捲り上げてある袖を引っ張り、答えをせがむ。
「ここは俺の実家だ、もう罪人呼ばわりするな」
信じられない。実家って、せい坊ちゃまって。
いったい私は、どこへ来ちゃったの?
院長から資産家とは聞いていたけれど、まさかここまでとは思わなかった。
あまりの衝撃に驚くことさえ忘れて、花々が色を競う辺りを見渡す。
「ぽかんとして面食らったのか?」
「この光景、信じられないですよ」
あまりに現実離れだから、にやにやしちゃって頭をゆっくりと横に振った、冗談みたい。
ここが、人の住んでいるところだなんて、誰が思う?
誰だって、不法侵入の住居侵入罪って思うよね。
って、あっ!
「さっき心配だって、しょんぼり頭がうなだれてたのは演技ですね」
「からかってみたくなった、花散策に来たことに間違いはない。さ、行こう」
いつもの温かな大きな手が、私の手を握り飄々と歩き出す。
からかっておきながら、何事もなかったような態度なんだから。
卯波先生は、自分のペースにもっていくのが上手だから、手を握られただけで私は卯波先生の思うがまま。
「狐につままれたような顔だ」
「ふつう、そうなりますでしょ。どうなってるのか、頭の中が混乱してますよ」
あとで、ゆっくりと説明してくれるって。
なにがなんだか状況が把握できないよ。


