「別に…返事が欲しくて言ったわけじゃないから。ただ、俺の気持ちを知っててほしい」
真剣に、私の目を見てそう言った。
最初はろくに目も合わせてくれなかったのに。
だからこそ、この言葉は嘘じゃないんだって思う。
胸の奥が熱くて呼吸が浅くなる。
私は叶兎くんの事、どう思ってるんだろう…
その時、後方からブォォン!!と低く唸るバイク音が響き渡った。
「…バイクの音…?っ乗って!」
『え、急にどうしたの?』
焦った声に腕を引かれ、倒れかけた身体を支えられながらバイクに跨る。
「後ろ」
後ろから聞こえたバイクの音。
それも、1台どころじゃない。
振り返れば、複数台のヘッドライトがこちらに迫っていた。
「はやく掴まって、あいつら俺達に向かってきてる」
『え…?!』
何台ものバイクが、こちらに向かって猛スピードで向かってきているのが見える。
「飛ばすからしっかり捕まってて」
敵意を帯びた光に背筋が凍る。
でもその時にはもう叶兎くんはアクセルを捻り、風を切る音と共に闇の中へと駆け出していた。

