「ん。人通りもほとんど無くて穴場の、俺のお気に入りの場所。胡桃に見せたかったから」


その声音に、心臓がまた跳ねた。

穴場なのに……私に教えちゃって大丈夫なの?
そんな疑問も浮かんだけれど、彼が「見せたい」と言ってくれた気持ちの方が嬉しかった。


『連れてきてくれてありがとう』


その後バイクから降りて、橋の手すりに沿って並んでしばらく黙って夜景を眺めていた。

この景色を見ていると、悩み事も全部忘れられるような、そんな風に感じた。


綺麗……

私がここに引っ越す前は、田舎に住んでいたからこうやって高いところから街の夜景を見るのは初めてだ。


冷たい夜風が頬を撫でていく。
二人だけで見つめる夜景は、静かで、心が澄んでいくみたいだった。



「胡桃、好きだよ」


『……え?』



今、…


振り向いた先で、叶兎くんは柔らかな目をしていた。


夜景が反射した綺麗な瞳に、息が止まりそうになる。



「俺は…血だけを目当てにお前と関わってる訳じゃない」



体育の時に、みんなの前でさらりと言った言葉。

あれは冗談なんかじゃなくて……。


…でも、私なんかのどこを?
特に取り柄なんてないのに。