『どこ行くの?』

「秘密」

『何それ!』

「着いてからのお楽しみ」


軽く笑った声が、夜風に溶けて耳をくすぐる。

暗い細道に、エンジン音だけが響いていた。

少し不安に駆られるけれど、それでも不思議とこの背中に抱きついていると安心した。


「心配しなくても、危ないとこに連れてったりしないから。言ったでしょ?見せたいものがあるって」


まるで心を覗かれたみたいに私の不安を先回りしてくる。

口に出して言ってないのに、全部お見通しだ。


そして、突然視界が開けた。


『……わぁ!』


暗い道を抜けた先は、大きな橋。

橋の上に差し掛かると視界いっぱいに夜景が広がった。

ビルの窓、車のライト、街灯の明かり……無数の光が散りばめられた宝石のようで、思わず息を呑む。


「綺麗でしょ、夜景」

『うん、すっごく綺麗……見せたかったものって、この景色のこと?』